暑さが厳しくなる少し前。家に帰ると封筒が届いていました。なかには1枚の布と手紙。差出人は内村航くん。布をつくる人です。

 “ラオスの村で見た簡素な機で織られる木綿布を参考にして作りました。そこで見た手紡ぎの糸で織られた布がとても美しいと感じたのが、布づくりの最初のきっかけです。また、電気もガスも通っていない村での布作りは、素朴ではあるものの村の中で確かな文化として光り輝いて見えました。人の手で作られた布と、その背後にある心地よい原風景を、自分なりに追求してみたいと思いながら作りました。
 作る中で重視している事は、糸は既製品を使うのではなく、自分で作る(紡ぐ)ということです”

その布は、とても貴重なものだから、使うことを躊躇しました。
でも、手紙のなかに書かれていた「自家製の手ぬぐい」ですという言葉に後押しされて、手ぬぐいなのだからどんどん使おうという気持ちになりました。
手ぬぐいと一緒にやまのあいだファームに通う日々がはじまりました。
やまあいのそばには水の湧き出ている場所があります。はじめて手ぬぐいを使う日、その湧水をたっぷりと含ませました。水を含んだ手ぬぐいの重さ、触り心地の変化を感じながら、きらきらと光る布に見とれてしまいました。
それからはいつも首に巻いています。肌触りは柔らかく、糸のなかの空気も一緒に首に纏っているみたいで、心地よさはもちろん、安心を感じます。


 “糸は「ガラ紡」という機械で作っています。手紡ぎに近い原理で、魅力的な糸を紡ぐことができます。原料は主に短繊維のアジア系の綿です。ワタに一気に撚りを加えて糸にする単純な原理は、手紡ぎと同じで、現代の工場の巨大で複雑な紡績機には出せない、素朴で豊かな風合いを生み出しています。ワタの品種や、求める番手(太さ)によって撚りの回転を調整しながら紡いでいきます。なにしろ原始的な仕組みで、家に置けるサイズ、操作も直感的で、この機械があってこそ、その後の織って布にするまでの工程を1人で行うことができています。
 糸紡ぎや機織りの行為は、精神的な安らぎを得る、とよく言われます。また、このような制作プロセスは、ガンディーの糸車の思想とも通じると思っています。布作りの歴史は、人類の歩みと非常に密接に関係しています。現代は圧倒的に機械生産の布が主流ですが、時間をかければ自分で作ることができます。その中で発見することも多いのではないでしょうか”



手紙を読んでいると、内村くんがとても楽しそうなのがわかります。
これからはもっと細い糸を紡いで、服をつくりたいそう。着てみたい。
私も、手ぬぐいを首に巻いて頑張ろう。
明日も暑くなりそうです。

●ますお