やまのあいだファームのお野菜には、変わったものがたくさんあります。
台湾生まれのピンタンロンナスや、牛の角のような形をしたカウホーンオクラ、皮が固くて鉈(ナタ)が必要かもというなたわりかぼちゃ……毎年、自分たちで種を採り、次の年につなげています。

ことり菜もそのひとつです。やまのあいだファームのオリジナル野菜。
去年の秋に種を蒔いて、暖かくなった今は一段とがっしりしてきました。力強い味わいが特徴です。5月には花が咲き、梅雨の前後に種ができます。ほかにはない品種なので、種が絶えないように気をつけているのですが、タイミングを逃すと長雨でカビてしまったり……種採りは難しいです。うまくいかずに、諦めてしまった品種もあります。

昔から、農家の人たちは良い種を残すことに精を出してきました。
毎年、いちばんできの良いものから種を採ったり、遠くに出かけるときには種を持って行って出先の地で交換していました。旅に出た種は、新しい土地、新しい環境で育ち、何年もの時間を経て、少しずつかたちや味を変える、そんなふうにしてさまざまの品種が生まれた。たとえば大根は江戸時代には100種類以上もあり、お料理によって使い分けられていたそうです。

現代は、いろいろな種をインターネットで簡単に買える時代です。種採りは、伝統を守るプロの人たちにおまかせしておけばよいのかもしれません。でも、手間のかかる、面倒そのものの手仕事のなかに、失ってはいけない大切ななにかがあるような気がします。自分の手で種を採る、その営みが失われませんように……そんなことを考えながら、私は種を採っています。

●あかね