こんにちは。坂ノ途中でエンジニアをしている片山です。
最近はおうちでお寿司を握る方も増えてきているように感じます。家で握ると自由なネタをつかって、たくさん食べることができて楽しいものです。人目を気にせず好きなネタを握ることができますし、変わり種も自由。最近は、ナスの素揚げの握りがベストヒットでした。
とはいえ、ショウガの甘酢漬け、いわゆるガリを自分で漬けている方はまだ少ないようです。
この新ショウガの旬の機会に自分でガリを漬けて一歩先に行ってみませんか?
(新ショウガのご購入はこちらから)

今回はレシピを調べるためのいろいろ寄り道と試行錯誤をまわりくどく書いているので、最終的なレシピに興味がある方はページ下部までぐるーっと一気にスクロールしていただければ幸いです。

まず、ショウガについて。ふつうの人がイメージするショウガは表面が黄土色になっているものだと思いますが、これは、ひねショウガ、あるいは土ショウガという、収穫したショウガを冷暗所などで保存したものです。産地として知られる高知では壕(ごう)と呼ぶ年中温度が安定した洞窟を利用しています。新ショウガは、保存する前の白くて葉が出る部分のピンク色が鮮やかでかわいいものです。やわらかくて辛さも抑え気味。

さて、新ショウガの旬はいつでしょうか。
今回の新ショウガの甘酢漬けをつくるにあたり図書館でいろいろとレシピ本を読み比べてみたのですが、15年以上前の本では秋、10-11月ごろと記述してあるのに対し、最近の本では初夏と記述されていることに気が付きました。
これは、特に産地である高知で、ビニールハウスを加温して促成栽培をすることによって出回る時期が早まったからのようです。この結果、市場に早く出回るようになりました。
しかし、普通に育てた場合は秋が旬。技術の普及で旬が変わったと受け止められるのはすこし面白いですね。ただ、化石燃料を燃やしての加温の環境負荷は知っておく必要があると考えています。

レシピの分析

前置きが長くなりましたがようやく新ショウガの甘酢漬けをつくっていきます。

新ショウガの甘酢漬けは、簡単な料理です。
1.ショウガをスライスする
2.スライスしたショウガを甘酢に漬ける
以上。

と、思っていたのですが、いろいろ調べてみると人によって全然違うことがわかりました。
まず、ショウガのスライスも、2mmくらいがいいという人もいれば、できるだけ薄いほうがいい、という人もいます。
切ってから水にさらすもあれば茹でるもの、なにもしないものまであります。
茹でるなかでも茹でて熱いうちに甘酢に漬けるべし、と書いてあるものもあれば、塩をして冷ましてからがよいとするものや、なかには、茹でて冷水で冷ましてから再び甘酢で2-4分煮立たせるものもあります。
甘酢の調合だってさまざまです。
基本的には酢と砂糖が材料ですが、調べた15レシピのなかで10は塩を入れている。
なかには、甘酢の20%をみりんが占めるものや、煮切りみりん、醤油、酒を入れるものもあります。ほか、昆布だしをいれたり。水の量もずいぶん違います。
なかでも特徴的なのは、砂糖ではなくメープルシロップを総量の28%ほどいれる有元葉子さんのレシピ([2])。
また、すしの技術大全では、玉水といって、お酒を水で10倍に薄めたものを、煮立つ直前にいれるというテクニックもあります([3])。
酢の量だって大きく違います。
平均45%だけれど、手づくり食品の会さんの74.3%から、CookPadのれおいちさんによる21%のものまで。
ちなみに酢については指定していないものが大半ですが、醸造酢を使うといいというものが目立ちます。特に好みがなければ米酢でよいでしょう。
有元葉子さんのレシピでは、文中では指定していないものの写真に村山造酢さんの千鳥酢が写っていました。自分もちょっと気合をいれるときのすし酢はこれを元につくっています。
スーパーなどで市販されていて手に入りやすいものの中では値段が高めですがよいお酢でおすすめです。
参考までに各レシピの体積比率をグラフにしてみました。

※ 敬称略、クックパッドの数字はつくれぽ数
※ 砂糖は1gを1.7mlとして換算しています。

この傾向は、著者が西か東かで変わるのかも、とも思いましたがそういうわけでもなさそうで、いろいろ地域や家庭での好みや伝承があるのかもしれません。
さて、ここでいくつかの先人たちの知見が集まったので、これをもとに試行錯誤していきます。

つくりかた

0.保存
新ショウガは低温と乾燥に弱く、冷蔵庫にいれると悪くなりやすいのでご注意ください。
すぐに調理することが推奨されますが、そうでない場合は新聞紙にくるんで常温においておくとよいでしょう。
1週間くらいはもつし、悪くなってもその部分をこそげとれば使えなくはないです。

1.薄さ
洗って皮をむきます。薄いのでピーラーではなくわりばしなどでこそげとってもよいです。剥いた皮はショウガの香りがいいので炒め物などに使うと便利。
スライサーで2mm、1.5mm、0.8mmを試してみたところ、薄いほうが食感はよい。
分厚いとショウガの辛さが残りすぎる気がします・・・。
ショウガは繊維が先端方向に向いていますが、これと直角にすぎると、かんだ時にしゃくっとほぐれてしまいあまりよくないと感じています。かといって、平行に切ると長い繊維が残るのでなんとなく斜めがいいのではないか、と思っていますがここは議論がわかれるところ。
スライサーは、厚さを替えられるものが便利ですが指を切らないようご注意ください。

2.塩
塩のあるなしを食べ比べてみましたが塩はしたほうがよい・・・と5人のうち3人ほどの意見がありました。
内田悟さんの本では、塩で繊維がほぐれ味が染みやすくなるとのことだけれど、すこしよくわからなかった[4]

3.茹でるかどうか、茹でるなら茹で時間は
茹でたほうが味が染みやすく、辛さがマイルドになる気がします。
ただし、2分茹でたのと4分茹でたのはあまり違いが判りませんでした。
茹ですぎると成分は落ちそう。ゆで汁はほのかにしょうがの香りがしたので炊き込みご飯や汁物にするとよいかもしれません。
4.甘酢
これはお好みで・・・。
自分の好みでは、酢40%、砂糖30%、水20%、みりん10%、塩0.5%という感じです。
砂糖が多いほうがうまい・・・。。
ひたひたになる分量をつくるにはショウガ200gには200mlつくるとよさそうです。

比較している様子

5.漬け時間
30分という人もいれば3日という人も。
1日漬けるとだいぶ変わるので味を比べてみるとおもしろいです。これはつくったひとの特権ですね。
3日漬けても10日たっても漬けすぎた感はないので漬けたあとのことは気にしなくてもよいようです。
レシピによっては、1月持つ・1年持つとあります。
長期保存するつもりであれば、瓶は煮沸消毒して密閉するようにしてください。

補足
・すしの技術大全では、ひねショウガを材料としています。そして、スライスしたショウガを茹でて、また甘酢で2-4分煮立てています。こうするとひねショウガでも辛さが落ちるのかもしれません。
・一般に市販されているしょうがを、根の部分と思う人もいますが、これは茎が肥大化したものです。

余談

ガリの由来について。
新ショウガの甘酢漬けのことをガリと呼びます。
衣食住語源辞典によれば、生姜を食べる際のガリガリという、かじり切る擬音による命名とのことですが、こういう口伝で広がりやすい食文化の言葉は語源を追いにくいですね。
小学館の日本国語大辞典によれば、がりに、一番後ろ・しんがりのことを指すとの記述があります。 寿司の口直し、最後に食べるものとして、後退する部隊の一番後ろを守る殿(しんがり)が転じたのではないか、という説を思いついたのですがいかがでしょうか。
終わりが雑でしたがまたみなさまのガリ・寿司情報お待ちしております。
ショウガについてはこの記事もご参考にどうぞ。
今週のレシピ:サトイモとショウガの炊き込みご飯
#新ショウガ #生姜 #しょうが #ガリ #がり

新ショウガは、坂ノ途中OnlineShopからもご購入いただけます。
ご購入はこちらから

参考文献

[1]2013, 辰巳芳子, 仕込みもの, 文化出版局

辰巳芳子さんによる「仕込みもの」。1986年に出版された本を再構成したもの。レシピだけではなく考え方も参考になります。

[2]2011, 有元葉子, うちのおつけもの, 文化出版局

丁寧なレシピ写真もきれい。
漬け物の基本もあまり知らなかったのでとても勉強になります。

[3]2013, 目黒秀信, すしの技術大全, 誠文堂新光社

2016年に買った本で一番高い本。だけれど詳細な情報も多く、はじめてみる魚を握るときに置いておくと参考になる。

[4]2012, 内田悟, 内田悟のやさい塾 旬野菜の調理技のすべて 保存版 春夏, メディアファクトリー

築地御厨の内田さんによる本。料理だけでなく野菜のこともいろいろ書いてあって楽しい。

 

著者について

ガリとあわせて寿司を撮るべく釣りに行ったものの小さい魚しか釣れなかった著者近影。

(撮影は釣り初心者の自分にいろいろ教えてくれた ミネムラ珈琲さん)
また野菜と魚のレシピを共有していきます。野菜や食に興味のあるWebエンジニア絶賛募集中です!

 

◆坂ノ途中の旬のお野菜セット[定期宅配]はこちらから